活動報告

2021.06.16

枝野代表、衆院本会議にて、「命と暮らしを守ることのできる機能する政府をつくる」

衆院本会議「一日も早く政権を担い、この危機を乗り越え、命と暮らしを守ることのできる機能する政府をつくる」、内閣不信任決議案の趣旨弁明で枝野代表

衆院本会議で15日、立憲民主党・無所属、日本共産党及び国民民主党・無所属クラブが提出した菅内閣不信任決議案が審議され、3会派を代表して枝野幸男代表が趣旨弁明をおこないました。菅政権を信任できない理由を説明するとともに、自民党に代わる新しい政権を発足し「感染症対策を抜本的に転換し、命と暮らしを守る政治を実現することを約束する」と表明し、新政権の所信を示しました。

感染対策の失敗

 菅政権を信任できない最大の理由について「国家的危機から国民の命と暮らしを守ることが出来ず、その意思や責任感、危機感と緊張感すらうかがえない」と言明しました。感染症対策での最大の失敗が「検査体制の遅れ」にあると指摘したほか、中途半端な水際対策、医療や介護などエッセンシャルワーカーへの支援の怠り、緊急事態宣言の遅すぎる発令と早すぎる解除なども問題視しました。

生活・経済への影響

 COVID-19が多くの人の事業や暮らしに大きな打撃をもたらしている中にあっても菅政権が、事業者支援や生活支援の対象を著しく限定したり、持続化給付金の申請や税と社会保険料の納入猶予特例制度を打ち切ったり、補正予算の編成を先送りしたりする姿勢に対して「国民の命と暮らしをないがしろにする許しがたいもの」と厳しく批判しました。

感染症危機と矛盾する政策の強行

 COVID-19の感染拡大で国民生活に危機が生じているにもかかわらず、菅政権が医療や国民生活を脅かす政策として、(1)後期高齢者医療費窓口負担の引き上げ(2)医療法改悪・病床削減促進(3)児童手当特例給付の廃止――などを強行したことも不信任の理由に掲げました。

国会延長の拒否

 感染症による国家的危機に対して、補正予算や法的措置の検討など「国会が果たさなければならない案件が山積している」と説く枝野代表は、菅内閣が野党が求めた国会の会期延長を拒否し、閉会しようとしていることに「政治空白を作ることは、無責任の極み」と断じました。

感染症対策以外の不信任理由

 また、枝野代表は、COVID-19対策の失敗にとどまらず、信任できない代表的な失政を6点指摘しました。まず、LGBT法案、選択的夫婦別姓制度、ウィシュマさんの死去の真相究明への消極姿勢や、特定商取引法と預託法の改悪など人権問題に対する感度の鈍さを問題視しました。2つ目にALPS処理水の海洋放出決定、脱原発の放棄などの環境・エネルギー政策を批判しました。3つ目に拉致問題、尖閣防衛への消極姿勢、土地規制法案の強行採決、イージス・アショアの大失態など外交・安全保障の問題を指摘しました。

 4つ目に選挙買収事件、総務省接待問題、森友・加計問題、カジノ導入問題など次々に起こる政治とカネの問題解決への後ろ向きな姿勢を断じました。5つ目に条文ミスの頻発、忖度行政、学術会議問題など菅総理の非民主的で強権的な姿勢が官僚システムに深刻な悪影響を及ぼしていると批判しました。6つ目に安倍政権と菅政権下で続いている経済の長期低迷傾向を問題視し、信任できないと表明しました。

根拠なき楽観論・正常性バイアス

 菅政権が感染症対策で間違い続けている背景について枝野代表は、危機において現実を受け止めることができず正常と変わりないと思い込む「正常性バイアス」に総理が陥っているからだと指摘しました。早すぎたGoToキャンペーンや、緊急事態宣言の遅れと拙速な解除など、いずれも根拠なき楽観論に基づいて判断し間違いを犯し続けていると分析しました。

現行の感染症対策を抜本的に転換

 菅政権を信任できない理由を示す一方で枝野代表は、自民党に代わる新しい政権の政策を表明しました。検査体制の遅れ問題には、「官邸に設ける強力な司令塔の下で、厚生労働省と国立感染症研究所というラインにとらわれることなく、民間も含めた幅広い能力を結集させ、『必要な時に誰でもすぐに受けられるPCR検査』、『すべての感染者とその周辺に直ちに幅広く実施できるゲノム解析』という体制を確立する」と述べました。

 水際対策については、「入国者に対して少なくとも10日間以上、ホテル等での隔離を求める」と抜本的に強化する考えを示しました。医療や介護などのエッセンシャルワーカーには、「使い勝手の良い広範で包括的な支援金や、従事する皆さんに対する慰労金を急ぐ」とともに、「賃金や労働条件を改善して、危機にも対応できる『支え合う社会』をつくる」と述べました。

 遅すぎた感染症対策と早すぎる対策の解除問題に関しては、「政治が判断するのに先立って専門家から意見を聞き、公開された専門家の意見を踏まえながら、最終的には自らの責任と判断で結論を出すという、本来の政治を取り戻す」と言明しました。

立憲民主党のzeroコロナ戦略

 菅政権による感染症対策の抜本改革を示すだけでなく、立憲民主党のzeroコロナ戦略の採用を提案しました。「zeroコロナ戦略は、感染者の数を一定水準以下に減らし、新たな感染者が出ても、感染ルートを速やかに把握し感染拡大を防ぐことができる状態にしておくことを言う。この状態を保つことができれば、感染拡大の繰り返しを防ぎ、経済・社会活動を順調に回復させることができる」と力を込めました。東京を例にすると、1日当たりの新規感染者数が50人程度になるまで措置を継続、その間は事業者や生活困窮者に追加の支援金を速やかに支給し、感染を封じ込め、早期に通常に近い生活・経済活動を取り戻す政策だと説明しました。

立憲民主党政権の事業・生活・医療支援策

 新しい政権が遂行する事業支援、生活支援、医療支援についても説明しました。「網羅的、包括的な支援となるよう、パッチワークを抜本的かつ速やかに組み替え、簡易な手続きで迅速に届けられるよう強化する」と述べました。さらに持続化加給金の再交付、年収1,000万円程度の人までの時限的な所得税減税、低所得の人への消費税5%相当額以上の現金給付、時限的な消費税減税を目指すと訴えました。

感染症対策以外の政策転換を推進

 人権政策を前進させるために「LGBT平等法の制定とともに、選択的夫婦別姓を実現させ、消費者保護法制のさらなる整備を進める」と決意を示しました。原子力政策に関しては、「原子力発電のない社会に向けて、不可逆的で明確な第一歩を踏み出し、原発に依存しない温室効果ガスの削減を、強力に推進する」と言及しました。外交・安全保障政策に関しては、立憲民主党が提出している「領域警備・海上保安体制強化法案をベースに、中国政府の意を汲んだと思われる民間船が大挙するなどの不測の事態に備えた法整備を進め、海上保安庁の体制も一層強化していく」と表明しました。土地規制法案は「撤回して再検討」するよう求めました。

 森友・加計問題や桜を見る会問題等に対しては、総理直轄の真相究明チームを設けて真相を究明するとともに、「隠蔽、改ざんなどが出来ないよう、公文書管理制度と情報公開制度を抜本的に強化し、公文書記録管理院の設置を目指す」考えを示しました。カジノ解禁の方針は「撤回する」と言明しました。行政のあり方については、「内閣人事局による中央省庁の幹部職員人事制度を見直し、官邸による強すぎる人事介入を抜本的に改め、官僚の皆さんが忖度なく意見具申でき、政治は、それを踏まえながら判断に責任を持つという、本来の適切な政官関係を取り戻す」と表明しました。学術会議問題では、新政権発足後「直ちに任命を拒否されてきた6人の方について、追加で新会員に任命する」と言及しました。

強力な司令塔の設置の決意

 正常性バイアスに関して枝野代表は、「国家の危機においてリーダーが正常性バイアスに陥ることは許されない。より悪い事態を想定して先手を打つことでこそ、国民の命と暮らしを守ることができる」と説きました。その上で新しい政権では、「つぎはぎだらけの体制と権限を、総理直轄で官房長官が担当する司令塔へと再編・集約し、各省から事務方の幹部を集めた強力なチームを構成して、迅速な総合調整を進め、戦略的で効果的な対策を実現する」と決意を示しました。

所得再分配機能の強化

 安倍政権、菅政権下で進められてきたサプライサイド重視の経済政策を「時代遅れ」と問題視。立憲民主党政権の経済改革の第一の柱として、消費を増やすデマンド重視の政策を提案しました。所得税や法人税の抜本改革を中心に、政府による所得再分配機能を高め、分厚い中間層を取り戻すため、必要な政策減税は残した上で、法人税への累進税率の導入、所得税の最高税率の引き上げ、金融所得の分離課税の強化、富裕層への社会保険料の応分の負担などで「支え合い」の社会をつくる財源に充てることを提案しました。同時にいわゆる給付付き税額控除、「消費税相当額を事前に給付する制度」を導入して、消費税の逆進性を抜本的に解消する考えも示しました。

賃金引下げ競争に終止符を打つ

 経済を活性化するために、次に重要なこととして「格差の拡大を防ぎ、その是正を図ることのできる経済構造の構築であり、賃金引き下げ競争に終止符を打つこと」と説きました。そのため、経済改革の第二の柱として、「非正規が圧倒的に多いハローワークの職員や消費生活相談員、図書館司書などまで含め、必要な公的サービスの現場を担う皆さんの賃金を底上げし、正規雇用を原則とする。最近は、自治体職員や教員まで無理に非正規化しているが、恒常的業務についているなら、原則として正規化していく」と提案しました。民間分野については、「最低賃金制度などの労働法制の整備、労働運動への間接的な支援、経済全体のハンドリングの中で、間接的に誘導する」と説明しました。「労働法制を強化して『正規雇用が原則』という社会を再構築し、中長期的な経済の安定と発展を図っていく」と述べました。

老後や子育ての安心

 新しい時代に向けた経済改革の第三の柱として、「医療や介護、子育てなどの将来不安を小さくすること」と指摘し、「必要な時に誰もが必要な医療や介護、さらには子育て支援等のサービスを受けられるよう、その供給量と質を確保する。こうした分野を支えるベーシックサービスの正規化と賃金引き上げで、その質を高めつつ必要なサービス量を確保するとともに、無償化など誰もが必要な時に必要なサービスを受けられる体制をできるだけ早く整えることで、将来の不安を小さくし、安定的な消費の拡大、経済の成長へと繋げていく」と表明しました。

支え合う日本

 新しい政権は、自助や自己責任を強調する社会を転換し、「支え合う」社会を作ると表明しました。これは「弱者保護を強調する政治でなく『お互いさまに支え合う』政治を目指す」ものと説明しました。これまでの収入や資産の要件を問う「弱者」に限定した政策の必要性を認めつつも、その対象となる「弱者」をできるだけ少なくし、「弱者だから」ではなく「必要だから」サポートする政策を充実すると強調しました。「新しい政権の下で、『お互いさまに支え合う』仕組みを強化し、それによって『誰もが安心できる』社会を再構築して、『情けは人の為ならず』ということわざの正しい意味を実感できる社会を実現する」と訴えました。

結び

 趣旨弁明の終わりに枝野代表は、「この危機と正面から向き合い、命と暮らしを守るための覚悟と準備は出来ている」と表明。菅総理が衆院解散を決断しても「受けて立つ。そして、一日も早く政権を担い、この危機を乗り越え、命と暮らしを守ることのできる機能する政府をつくるために、あなたのための政治を実現するために、全力を尽くして参る」と力を込めました。国民の皆さんに向けては「命と暮らしを守る、あなたのための政治を、まっとうな政治を、私とともに作っていきましょう。そのことを通じて、新しい時代に、誰もが取り残されない支え合う社会をつくりましょう」と呼びかけ、趣旨の説明を終えました。

菅内閣不信任決議案趣旨弁明予定稿.pdf